EC強化を進めるコストコ。同社の強みと課題とは?

全米の小売業ランキングで4位の座に君臨するコストコ。

その特異な経営戦略は、他の小売業と一線を画している。彼らが日本に進出した際、それが失敗に終わる理由を説明するのは難しく無かった。スーパーなのに年間費が必要な上、店舗の設計やオペレーションはローカライズせず全世界共通、費用の掛かる広告は一切行わず、商品はアメリカンサイズで巨大だ。


当時の経営の常識から見れば、非常識で無謀とも思われた同社の挑戦は、なぜか日本で受け入れられることになる。且つてカルフールやテスコなど『黒船』と揶揄された欧米系のスーパーは、ことごとく日本撤退か縮小を迫られる中、米国でのビジネスモデルを、そのまま日本に持ってきた同社の成功は、一種の驚きと共に語られる事になったのだ。

同社の成功の秘訣は、徹底したコスト削減、商品の絞り込み、極限まで粗利率を下げた価格戦略などが挙げられるが、消費者の立場から言わせて貰えば、その『楽しさ』にある。

通常、食料品の買い物はワクワク感を伴うような物では無い。
何時言っても同じ商品が並んでおり、新しい発見は乏しく苦痛なものだ。しかし、コストコは違う。頻繁に商品が入れ替わり、見た事の無い商品が並ぶ。店内ではフレンドリーな店員が、試食やデモンストレーションを行っており、買い物終わりには、フードコートで格安のホットドッグを頬張る。謂わば、退屈な日々の買い物にレジャーの要素を取り入れた点が、他社との差別化を生み出したと言える。

※ 時にはチキンレッグを1本そのまま渡される事も…。もはや試食のサイズを超えている…。

・メーカーのメリット

陳列される商品は、どれも巨大だ。

1ガロン(約3.8L)入りの飲料や、3㎏入りのボディーソープ、米袋のようなサイズのポテトチップスなど、包装や輸送コストの面から見て、価格を最安に設定出来る分量を基準にサイズが決められる。メーカーにしてみれば、コストコ専用サイズの商品を作らなければならない手間は存在するが、流通面ではコストコの物流センターに一括で納品する事が出来る。つまり、メーカーは全国のコストコ店舗へ個別に納品する必要が無い為、結果的にコストは安くなる。また、日本で認められればコストコのネットワークで世界展開も見えてくるのだ。

・利益率は他社の半分。

コストコの粗利益率の平均は、約11%だ。

これは、競合他社と比べると格段に少ない。因みに他社の数字を見て行くと、イオンが26.4%、イトーヨーカ堂が29.6%だ。製造から実際に商品を売る小売店までが全て異なるプレーヤーで構成される小売業では、通常サプライチェーンの中で、どこが利潤を取るかせめぎ合いになる。1社で儲け過ぎないという事が、メーカーとの関係を築く上で重要になって来る。コストコは、この利益の少なさを年間費カバーすると言う独自のビジネスモデルで発展してきたと言える。

・徹底したローコスト・オペレーション

コストコに行って気付くのは、店員の少なさだ。
広大な店内ではあるが、試食要員とレジ担当の店員以外を目にする事は少ない。
通常スーパーでは、品出しの店員が20名程必要だと言われている。ただ、コストコの場合、基本的に品出しは深夜2時頃に行われる。それも、パレットに積まれた商品をフォークリフトで入れ替える為、時間と労力が削減出来るのだ。


このローコスト・オペレーションがコストコの真骨頂だと言える。

具体的に販売管理費で見て行くと、コストコの9.8%に対し、イオンは31.8%、イトーヨーカ堂は24.9%と圧倒的な差を生んでいるのだ。

・遅れるECへの対応

コストコにとって店舗での『体験』を重視した戦略が成長の原動力となる反面、その事がEコマースへの取組みを遅らせて来た事は否定出来ない。

近年、同社はEC事業に注力している。具体的には、ECからの注文を店舗で受け取れる仕組みの構築と、買い物代行業者であるインスタカートとの提携だ。


コストコの会員の方なら分かると思うが、週末の店内はある意味カオスだ。

確かに通常のスーパーと比べて通路は広く取られているが、アメリカン・サイズのカートは、大き過ぎて、それを押しながら人混みの中を進むのは大変な苦痛とも言える。私自身、それが嫌で以前と比べて来店頻度は減っているのは否定出来ない。

日本では、今年中に通販に本格参入すると伝えられているコストコだが、やはり日常的に使用する定番商品は、ネットで買えると有り難いのだ。

 正直、同社のECへの取組みは競合するウォルマートやクローガーと比べると、大きく遅れている。しかし、ようやく1歩踏み出したことで確実に成果は出つつあると言えるのだ。
同社発表の数字では、2019年上半期のECの売上高は、前年比で25.9%増。その事が既存店売上高を確実に押し上げており、9.2%と大幅な増加を達成した。合わせて営業利益も同等の数字を叩き出しており、この成功が同社のECへの取り組みを加速させることは確実と言える。

スターバックスやコストコなど、店舗での『体験』を重視する店舗にとって、ECとの親和性は高いとは言えない。ただ、重要なのは利用者に選択肢を与える事だと言える。そして、ネットから誘引した利用者を店舗に送り込む仕組みを整える事が出来れば、Amazonにとって彼らが強力なライバルとなる事は、間違いないと言えるのだ。