銀行崩壊の始まり !? アリペイが遂に給与振込を無料化。


アリババの関連子会社であるアント・フィナンシャル社が運営するアリペイは、2019年には、その利用者が10億人を突破して世界最大の電子決済プラットフォームとなった。

その取引金額は8兆ドルを超えていると見られ、これはドイツの国内総生産の2倍に相当する。

今回、その『アリペイ』が、企業向けに従業員への給与振込を無料で提供するとの発表を行い、銀行業界に激震が走った。なぜなら、このことは人々が銀行口座を持たなくても生活していける事を意味しているのだ。


都市部では、既に40%の人々が財布を持ち歩かないと言われている中国では、百貨店から町の屋台に至るまでスマホ決済が浸透している。更には、このスマホ決済すら過去の物となりつつあり、顔認証決済の浸透によりスマホすら必要無いと言われる程、電子決済が普及している。

・アント・フィナンシャル社が開発した小型顔認証システム『トンボ』。
小型化と導入コストを従来の装置より80%削減出来る事が特徴で、中国のセブンイレブン1000店舗への導入が決定している。


銀行にとって、給与振込は謂わば『最後の砦』とも言える。

企業が毎月支払う膨大な振込手数料は勿論、従業員が口座を作る事で自動車ローンや住宅ローンと言ったサービスを、口座開設を起点に呼び込む事が出来る。銀行にとっては、焦付く可能性が比較的低い安定した収入源となっているのだ。

しかし、今回アリペイは、この『最後の砦』に触手を伸ばし始めた。それが、新サービスである『発唄』だ。このシステムを導入すれば、企業は今まで銀行に毎月支払ってきた膨大な額の手数料が無料になるだけでなく、予め給与額のリストを作っておけば、ワンクリックで給与支払いの業務が完了してしまう。企業は、これにより多くのコストを削減出来るのだ。

一方、アリババにとってのメリットは、個人の『お金の入り口と出口』を網羅できる点にある。

今まで利用者は、銀行口座に振り込まれた現金の一部をアリペイに移管し、使用していた。
今回、全額がアリペイに振り込まれる事により、収入の全容を把握する事が可能になる。このビックデータは、アリババが提供する小売り・金融サービスなど様々なビジネスに活用出来る価値ある情報となるのだ。


ジャック・マー氏が創業したアント・フィナンシャル社は、今や世界最大のフィンテック企業へと成長した。数々のイノベーションを生み出し、人々が食料品を買うように保険を購入出来たり、数秒でローン審査が完了する驚異的なシステムを、僅か数年で構築してしまったのだ。

その上、利用者はアリペイにお金を移管する事で最大7%もの金利を享受出来る。これは、1~2%という既存の銀行金利とは比較にならない程、有利な条件だと言える。

つまり、アリペイは既存の銀行が行っているサービスを、より敏速に良い条件で行う事が出来るのだ。そして、それを可能にしているのがお金の流れから得られる『ビックデータ』の存在だ。小売から病院経営まで、一見、シナジーも無く無計画に多角化するアリババの事業は、この『ビックデータ』をコアコンピタンスとした全く新しい企業形態だという事が出来る。


且つて、就職できれば一生安泰とされた銀行は、そのシステム自体が崩壊の危機にある。

それは紙のお金が無くなりつつある、という事が本質では無く、顧客の期待するサービスを提供出来ていない事を意味する。

元来、国家による護送船団方式が採用された銀行業は、まともな競争も行われず、各社横並びが常態化していた。多くの利用者にとって必要な15時以降や週末の営業は無く、融資業務に於いても、企業の価値を計る事をせず、担保を基に融資を行う巨大な『質屋』と化していたのだ。


アント・フィナンシャル社は、この『発唄』のサービスを中小企業や個人事業主を中止に展開して行く予定だ。これは、いきなり大企業を相手に行う事で、銀行の反発を避ける目的だと思われるが、一度出来た流れは不可逆な物と成り、やがて全土に広がる事は間違いない。そうなれば、本格的な銀行淘汰の時代が始まるという事だ。

時代はパラダイムシフトを迎えていると言われる。
しかし、そのスピードは私達が想像するよりも遥かに速いスピードで進行している。その原動力になっているのが、人工知能の存在だ。企業が変われば、雇用も働き方も変わる。その事を本当にリアルに感じている人は、どれだけ存在しているだろうか?

最近、経団連の中西会長や豊田章男社長が、相次いで終身雇用の限界について発言している。しかし、実際には遥か前に多くの大企業が、副業の容認を発表したように、企業は各個人が会社に依存する事無く自己責任で生きて行く事を求めている。
その事を敏感に感じ取り、自分を変えて行く事こそが今求められていると言えるのだ。

名刺から会社の名前が消えた時、自分に何が出来るのか、その事を各自が真剣に考えなければならない、そんな時代が、すぐそこまで迫って来ていると言えるのだ。