アリババが変える世界の物流。菜烏網絡の凄みとは?

世界的に進行する小売業のオムニチャネル化の中、その最大の課題は物流だと言える。
『物流を制するものが、小売りを制する。』そんな時代がすぐ傍まで迫っているのだ。

現在、Eコマースの世界で双璧を成すAmazonとアリババであるが、実は、そのアプローチにおいては、かなり異なっている。これは、両社のビジネスモデルの違いに拠るところが大きい。

自社での直販比率の高いAmazonに対し、アリババはマーケット・プレイスの提供のみに特化し、自社での直販を行わない。
つまりAmazonは、世界最大の小売業であるウォルマートのように、スケールメリットの享受をEコマースの世界で行う事で、安く大量に売る大規模小売店を作る事を目指している。一方アリババは、自らが運営するT-MALLやタオバオなどのプラットフォームを通じて、起業を促進させる事で競争を活性化し価格の適正化を図るビジネスモデルを採用している。


この違いは、物流へのアプローチに色濃く反映されている。

FBA(フルフィルメントby amazon)を採用するAmazonは、倉庫やトラック、はたまた飛行機に至るまで、物流に関わる全ての要素を自社で運営するのに対し、アリババは、そう言った物を一切持たない。なぜなら小さな商店の集合体であるマーケットプレイスにおいては、在庫が分散してしまい、Amazonのような物流網は意味を持たないのだ。

そこでアリババは『菜烏網絡』という会社を設立し、中国全土に散らばる参加小売店の物流を一手に引き受ける戦略を採用している。
『菜烏網絡』は中国最大級の物流会社であるが、自社では1台のトラックも所有していない。彼らが提供するのは物流プラットフォームだ。


菜烏網絡の物流プラットフォームには現在、大手から零細まで3000社以上の物流会社が参加している。
菜烏網絡が提供するサービスは、謂わば物流の電子化だ。彼らは参加企業を束ね、リアルタイムで加入企業のトラックや倉庫の稼働状況を把握し、荷物を最適に振り分ける。更には、そこから得られるビックデータを駆使し、一つの宅配会社にタスクが集中する事を防ぎ、ひいてはコスト削減や、配送時間の短縮を実現している。

この両社のアプローチの違いは、収益性に大きな差を生んでいる。
現在Amazonの社員数は、全世界で57万5000人を超えると言われているが、アリババは、僅か6万6000人しかいない。この内何人が物流に関わっているかは、予想の範囲を超えないが、Amazonにおいては、かなりの割合を物流に割いていると思われる。


この身軽さこそが、アリババ最大の強みと言えるのだ。

この違いは両者の営業利益率に如実に反映されている。具体的に昨年の四半期の数字で見て行くと、アリババが31.25%なのに対し、Amazonは僅か2.31%になっている。

アリババのビジネスモデルが優れている点は、彼らのマーケットプレイスに参加する企業と利益の一致が図れている点にある。

Amazonのマーケットプレイス参加企業にとって、最大の不満は情報の断絶にある。参加企業にとっては、自社の商品を誰が買ったのか?というマーケッティングに不可欠な情報が、Amazon側からは一切提供されないのだ。
このように情報を一手にAmazonが独占する事で、Amazonは自社の優位性を確保している。不満を持ちながらもAmazonのマーケットプレイスを利用し続けるのは、企業にとってAmazonの力が余りにも大きいからに他ならない。

一方、アリババはこのような情報を積極的に参加企業に提供している。なぜなら、かれらのビジネスモデルの特徴上、参加企業の商品が売れない事には、手数料収入が得られないからだ。
参加企業が儲かればアリババも儲かる、というwin-winの関係を築けている点は、非常に大きな強みと言えるのだ。


現在、アリババは1兆8000億円という巨額の投資を行う事で、更なる物流の革新を行おうとしている。
それにより、24時間以内の中国国内配送、3日以内の世界中への配達を目標に掲げている。菜烏網絡は既に、杭州(中国)、クアラルンプール(マレーシア)、ドバイ(アラブ首長国連邦)、モスクワ(ロシア)、香港、リエージュ(ベルギー)に大規模な国際物流ハブを所有しており、今回新たにスペイン郵政と戦略的パートナーシップを締結した。これにより現在は、欧州への配達に10日前後掛かっているのを、段階的に短縮し3日まで縮める計画だ。

11月11日は、中国では『独身の日』とされ各社が様々なキャンペーンを展開、1年で最も商品が売れる日と言われている。
昨年のアリババは、僅か1日で3.5兆円の売上を記録した。この数字は、日本の楽天の1年間の売上量に相当する。注文総数13億5000個の荷物は、僅か3日間でデリバリーしたのだ。因みに、この中には海外からの注文の2000万件も含まれている。

このサイバー攻撃に匹敵するほどの情報量を捌く処理能力と、物流能力は他の企業を遥かに凌駕していると言える。この中心的な役割を担ったのが菜烏網絡だ。
中国の面積は、日本の約25倍だ。この面積に対応する為には、注文を受ける前からある程度の需要予測を行い、予め注文が起こると思われる地域に在庫を分散させておく必要がある。彼らは、人工知能などのテクノロジーを駆使して、それを見事に実現したのだ。

流通業界は、今も課題に満ちている。
Amazonを含め各社が試行錯誤を繰り返す中、アリババは、『独身の日』などシステムに過剰な負荷が掛かる日を意図的に作り出す事で、その能力を飛躍的に向上させている。
現在、Amazon・ウォルマート・アリババという小売業界の巨人達がアジアを舞台に直接対決を始めようとしている。その中で、一番重要視されるのは、言うまでも無く『物流』に他ならない。各社がアウェイの土地で、如何なる対決を繰り広げるのか、世界的な注目を集める事は間違いなさそうだ。