ウィーワークIPOに見るAI投資の過熱感。岐路に立つソフトバンクG。


今月13日、米ウィーワークは新規株式公開の場にナスダック市場を選定した。

一部メディアでは、ソフトバンクGの孫正義氏が、再三IPOの延期を要請したと伝えられる中、創業者であるアダム・ニューマンCEOとの協議は物別れに終わったようだ。
(追記:後日10月までの延期を発表)

 

これにより厄介な立場に立たされたのがソフトバンク・ビジョンファンドだ。
前回同社が主導した資金調達では、470億ドルとされた企業価値であるが、現在の予想では150~200億ドルと半分にも満たない水準までげ下落しており、Uberの事例と合わせてAIベンチャー投資に対する過熱感が露わになりつつある。この事態が進行する事は、何としても食い止めなければならない同社にとっては、このIPOを成功させる事が最優先課題であると言える。


そんな中、ソフトバンクGは今回のIPOで新たに少なくとも7億5000万ドル(810億円)分の株式取得を行い、株価のテコ入れを行うことを決めたと米ウォールストリート・ジャーナルが報じた。この投資がビジョンファンドでは無く、ソフトバンクGにより行われる事が、同社の苦しさを表していると言える。


今回のIPOにおいて、従来の企業価値と大きな乖離が生まれると、ビジョンファンドが今まで投資してきた多くの企業の価値まで疑われる事になる。その事を孫正義氏は、一番危惧している筈だ。
ただ、現在AIベンチャーに対する投資が過熱気味なのは疑う余地が無い。それは、ビジョンファンドの参入により、たった1年でベンチャー企業への投資額が、倍以上に跳ね上がった訳だから当然だと言える。

今回、第2弾のビジョンファンドを発表した同社にとって、ウェーワークのIPOは、その試金石としての役割を担っており、多くの投資家達が注目していると言えるのだ。


元来、ベンチャー投資とは丁半博打のようなギャンブル性の強い性質を持つ。

孫正義氏は、それをIPOを間近に控えたユニコーン企業に限定する事で、リスクを最小化するという画期的な手法だった。当然だが、そのような企業には多くの人間が投資したがるが、通常なら後乗りは出来ない。そこに圧倒的なマネーのボリュームで謂わば強引に参入して行ったのがビジョンファンドだったのだ。

ベンチャー企業にとって、利益を取るか、市場を取るか、という問題は非常に悩ましい問題ではあるが、ビジョンファンドによる圧倒的資金により、創業者は市場を取る事に専念出来たのである。その一方で、マネタイズが疎かになる傾向は否定出来ず、現金を燃やしながら突き進む企業も多い。
好景気であれば、常に潤沢な資金が集められる為問題は無いが、景気が悪化する局面では、それは簡単ではない。


今、多くのユニコーン企業にとって難しい局面になりつつある。

それは、米中関係の悪化によりリセッションの可能性が増す中、今、上場すべきか、それとも引き延ばすべきか、という判断だ。おまけに、Uberやリフトの例を見るまでも無く、投資家のIPOへの判断は年々、厳しさを増しているのだ。

多くのユニコーン企業は、急激な成長を遂げてはいるが反面、莫大な赤字を垂れ流している。
現在は、潤沢な投資マネーに助けられキャッシュフローは廻っているが、仮にこの先不況に突入するとなると、安定した資金を調達できる保証は何処にもない。不況時に一番に削られる予算は、投資分野だと言えるのだ。

そして、この不安はビジョンファンドにとっても同様だ。
ライドシェア・ベンチャーの多くは、毎年数千億円の赤字を垂れ流しながら経営されている。この資金をソフトバンク・グループ1社で負担する事は、到底不可能だと言えるのだ。


孫正義氏は、世界的に見ても稀有な経営者だと言える。

彼のような百戦錬磨の経営者は、当然このような場合のシナリオも考えている筈だ。
分かってはいるのだが、一抹の不安を払拭出来ない自分が居るのも確かだ。
特にライドシェアに至っては、Uberを始めまともにマネタイズ出来ていない企業も多い。

今回のウィーワークに関しては、今までと違いソフトバンクG本体が資金を拠出して、株価を支えるという事は、株主からの批判も避けられないと言える。
景気後退が差し迫るの中、孫氏がどのような舵取りを行うのか、今後の動きを関心を持って見て行きたいと思う。