様々な問題を抱えるビジョンファンドであるが、ウィーワークへの投資を無事イグジット出来るかどうかが、今後の同ファンドの試金石となるのは間違いない。
ただ、IPOバブルが終焉する中、今までのように莫大な赤字を垂れ流しながら、現金を燃やし突き進むという手法は、市場の理解を得られにくくなる事は確実だ。
現状と掛け離れ、過剰に膨れ上がり続けた企業価値は、今回の問題で現実が露呈してしまった。
だからと言って、私はビジョンファンド自体を否定するつもりはない。孫氏が唱える理念や方向性は、非常に納得性の高い物であり、目指すところは間違っていない。
ただ、同社が与える莫大な投資資金は、起業家からマネタイズの意識を麻痺させる弊害をもたらしたのも事実だと言える。設立数年のベンチャー企業が、いきなり数千億円もの資金を突如与えられれば、金銭感覚がおかしくなるのは当然だ。
『金は出すが、口は出さない。』
ビジョンファンドは、この方針を永らく貫いてきた。
しかし、今回の潮目の変化は、同ファンドの方針を大きく変えてしまうかもしれない。
米中の貿易戦争が激化し、世界的な経済の停滞が囁かれる中、投資先企業を如何に黒字化させていくか、孫正義氏にとって微妙な舵取りが求められる事は、間違いないと言える。